アナトミー・トレイン(『アナトミー・トレイン−徒手運動療法のための筋筋膜経線』著:Thomas W Myers)の中でdeep front lineという概念がある。
本書によると、deep front lineが関与する具体的な身体運動はないとされていて、遅発性の持続性収縮型の筋繊維が多いとされている。
deep front lineは浅い層の構造と各ライン(※)が骨格と効率的に相互作用ができるように中心の構造を安定させて、わずかな位置の変化を起こしている。
つまり、deep front lineそのものには運動機能としての具体的な役割はそこまでないが、四肢や表層の部位を安定させるための役割として機能している。
運動機能として具体的な役割がない以上、そのラインを明確にしていくことは…感覚していくことは困難ということになる。
このラインを感覚して明確にしていくためには、“遅発性の持続性収縮型の筋繊維が多いとされている”という説明がそのためのヒントになる。
アシュタンガヨガのシークエンスの中でポーズを取りながらウジャイ呼吸をしていくことが、このdeep front lineを活性化して明確化していくためには良い手段になっていると個人的に体感している。
ヨガの聖典の一つである『ヨガ・スートラ』にアーサナ(坐法・ポーズ)の記述がされている箇所は2章の46〜48節にしかないが、書かれていることを再現するためにはdeep front lineをアクティベイトすることが密接に関わってくるだろう。
しかし、アドバンスシリーズのような柔軟性と強靭さが要求される派手なポーズの中で、その感覚を体現化したり、明確化することは難しくなると個人的には感じてしまう。
どちらかというと、まずは地味なポーズを正確に実感して、呼吸をしていくことでこそ、その感覚は明確になっていく。
そのように取り組むことで“遅発性の持続性収縮型の筋繊維が多いとされている”という言葉の意味を体感しやすくなるだろう。
deep front lineはチャクラのラインで言えば、ムーラダーラ・チャクラから始まり、スワディスタナ・チャクラ、腹部のマニプラ・チャクラ、鳩尾から胸骨付近のアナハタ・チャクラ、そして鎖骨中央から顎の辺りのヴィシュダ・チャクラ辺りを覆っている。
日々実践を継続する中で、地味なポーズの中にそれを感じとり要素化するための集中力と繊細さを養うことが必要不可欠となる。
※スーパーフィシャル・バックライン(SBL)、スーパーフィシャル・フロントライン(SFL)、ラテラル・ライン(LL)、スパイラル・ライン(SPL)、アーム・ライン(AL)、ファンクショナル・ライン(FL)
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