痛みは脳の錯覚の可能性もある。
痛みの箇所にはもう傷や痛みの要因となるものはないのに身体は痛みを訴える。
それは脳が痛みを記憶してしまうからだ。
そのメカニズムは人類が新しい言語の単語を記憶するのと似たものらしい。
記憶されてしまった痛みを払拭するのはなかなか難しい。「私」が痛くないと訴えても「脳」は痛いと勝手に訴えてしまう。
脳の特定の部分にのみ活発に働いている状態でそこが痛みの信号を発信する。それは習慣化、癖化と呼んでもいい。ヨガ哲学の言葉で表せば「サムスカーラ」だ。
「サムスカーラ」は過去の経験や行動によって形成された心の痕跡となり、潜在印象として蓄積されていくことで、後の自分の行に影響を与える。
過去のトラウマや感情、習慣などが現在の心身の状態や行動に影響を与えてしまう。痛みや恐怖心も過去の経験や思考パターンによって形成してしまうという考え方だ。
脳には可塑性という機能がある。環境や経験に応じて変化し適応する能力のことだ。
脳は生まれたときから決まった形で固定されているのではなく、新しい情報や経験によってつねに変化し成長している。そう捉えてみると、脳はとても素直な性格を持っていることになる。
素直過ぎるので無意識下でも多くの情報と感覚をキャッチしてくれている有り難過ぎる代物だ。
人体のバランスをとるためにその情報や感覚を扱うのに適した脳の中のセクションへ割り振って作業をしたり、時には機能が異なるセクション同士を統合して作業を進める。つまりフルオートなマルチタスク機能を持っている。どんなコンピューターよりも最先端だ。
強烈な印象によって刻まれてしまった新しい単語や痛みを記憶していつまでも残してくれる。
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