アシュタンガヨガに興味はあるけれど、やったことがない人は完成されたポーズの写真や動画を見て「自分には無理だ」と感じてしまうことがよくある。
脚を首の後ろにかけたり、深く背中を反らせたりする姿を見ていると自分とはまったく違う身体能力を持った人たちの世界のように見える。
また、練習を始めたばかりの人も見本となるポーズの完成度ばかりに目を向けてしまいがちだ。
「どうしたらこのポーズができるようになるのか?」
「何をしたら身体が柔らかくなるのか?」
といった最短距離でポーズの完成に辿り着くための質問をよく受ける。
YouTubeやInstagramで完成されたようにも見えるヨガのポーズをとる人達の多くは初めからそのようなポーズをとれていたわけではない。
ごく少数の人で、はじめからそのようなポーズをとれてしまう人もいるにはいる。
しかし、多くの人にとっては、その背景には、そのポーズの形に至るまでの長い時間と地道な積み重ねがある。
アシュタンガヨガの目的はそのポーズの完成形をとることではない。
アシュタンガヨガは「できるようになるヨガ」ではなく、「今の自分を知るヨガ」だ。
ほぼ毎日、アシュタンガヨガを実践していると、呼吸に合わせて身体を動かしていく中で、自分の身体の状態に気づいていける。
今日は身体が重い。
ここは思ったより硬い。
ここに余計な力が入っている。
そんな小さな発見の連続だ。
身体は毎日同じではない。
柔軟性も、筋力も、呼吸の深さも日によって異なる。
マットから降りた後の仕事やプライベートでの出来事により、身体の深層とマインドは強張りもするし緩みもする。
その影響は次の日のマットの上での実践に確実に影響を与えてくる。
だからこそ、他人と比べる必要もないと言えばないが、
他人と比べることで気づけることもあるから、比較することも必要ではあるけれど…
大切なことは、今この瞬間の自分の身体を感じることだと言える。
アシュタンガヨガは近道のない道…
一度の練習で劇的に変わることはまずはありえない。
まれに、たまたま練習場に来て、一度の練習で、一度の指摘で変化が起こる人もいるが、それはその人がその変化が起きるための準備が蓄積されている状態だったに過ぎない。
日々の実践の蓄積の結果…そのための準備が整っていたということだ。
呼吸とともに身体を動かす練習を、静かに、丁寧に、繰り返していくことで少しずつ身体は変わっていく。
その変化はとても静かなものだ。
ある日突然ポーズが出来るようになるというより、気がついたら以前よりも自然に動けている。
そんな変化だ。
完成されたポーズはアシュタンガヨガのゴールではない。
むしろ、その過程の中で自分の身体を知り、自分の感覚に気づいていくこと。
その地道な積み重ねこそが、アシュタンガヨガの実践だ。



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